熱くてダサくてかけがえのない部活動という小さな世界
ノスタルジーに浸ってしまう本に出会いました。
中学高校と吹奏楽部に所属していたことは以前どこかに書いた気がするのですが、ただ目についたので選んだだけの本だったんです。
『表紙ペットだし』と正直あまり期待していませんでした。卑屈だ…
音楽なんて、単純な物理法則を利用した儀式に過ぎない。
音楽なんて、雑多な情報に取り囲まれた空虚に過ぎない。
音楽なんて、本来他人とは共有しえない閃きに過ぎない。
音楽なんて振動に過ぎない。
音楽なんて徒労に過ぎない。
音楽は何も与えてくれない。与えてられていると錯覚する僕らがいるだけだ。
そのくせ音楽は僕らから色々に奪う。人生を残らず奪われる者たちさえいる。
なのに、苦労を厭わず人は音楽を奏でようとする。
種を植え歩くようにどこにでも音楽を運んでは奏で、楽しいことばかりならいいけれど、それを原因に争ったり病気になったり命を絶ったりする。
そんな手に負えない悪辣な獣から僕らが逃れられない、きっと、そいつと共にいるかぎりは何度でも生まれ直せるような気がするからだ。そいつに餌を与えながら、滑らかな毛並みを撫でてきた者ほど、予感に逆らえず、背を向けられない─。
存じ上げず大変申し訳ないのですが、この本はベストセラーだったみたいですね。
所さんの「笑ってこらえて」とかで吹奏楽部特集するようになった辺りだったから売れたんでしょうか。
コントラバス(通称:弦バス)
40過ぎの冷めたオジサンの目線でやらかしてた自分たちの青い時代と黄色い現在を淡々と語る話でした。
なぜ売れたのか分からない、みたいに書いてしまうと面白くなかったみたいなんですが、本当に楽しく読ませていただいたんです、弦バスの立ち位置の微妙さとかね。
ただあまりにも内輪ネタが過ぎるというか、吹奏楽(主に楽器や曲)に関しての知識がなくても分かる面白さなのかな、と。
作者ご自身が弦バス経験者だそうで、一般的に認知度の低いコントラバスをそこここで暴露してくれています。
あのジャズとかで時々いる、立って弾く大きなヴァイオリン…
この弦バスという少し浮いた存在については、もう本当に身にしみて、心に沁みて…後輩にぶつけられた後頭部の痛みが蘇ってきたくらい。
やたら大きいのに腑抜けた不気味な音しか出せなかったり、
(出すのにコツがあって、しかしたとえ数人でしっかり音が出ても管楽器1本でキレイに隠れる)
持ち運ぶ時は大工が材木担いでる状態になるからあちこち傷だらけだったり。
(見かけよりもかなり軽いんだけど初心者が余裕かますと周囲の後頭部に犠牲が出る)
吹奏楽≠ブラバン
一般的には吹奏楽部イコールブラバンのイメージかと思いますが、正式には異なるんですよね。
これに関しては作中で顧問の先生対生徒の争いの場面が出てきます。
また、重要な登場人物であるユーフォやホルン、バスクラなんて一般の方はどんな楽器かも分からないんじゃないかな。
でも、いろんな種類の楽器が音を出すのにも四苦八苦するところから始めて、学生生活や先輩後輩の人間関係、恋愛関係などまであれこれ苦悩しながら、1つの音楽を作り上げていく。
その過程と出来上がった時の達成感とか、演奏会やコンクールでやっちゃった時のやるせなさや苦々しさとか。
『ダメ金』という言葉は先述の「笑ってこらえて」でだいぶ認知度が上がりましたよね。
読み進めていくことでいろんなことが思い出されて胸を衝きます。
音楽を作り上げるとか言いましたけど、高学年になってくると新入生がB♭音階きれいにtutti(トゥッティ イタリア語で合奏の意)できただけで泣きましたけどね。
二度と戻らない
しかしきっと、吹奏楽部というマイナーで変わり者の集団という点を抜いても、青春群像劇として楽しめないこともないのかも。
日が当たっていてもいなくても、誰にでも青春時代と呼ばれるものはあったはずだから。
どの一瞬一瞬も決して二度とは戻ってこないのですが、こんなに中高時代が輝かしく思えるのが不思議です。
とても小さな世界に生きていて、その中での出来事が全てだと思っていたような…
それには危うさもあるけれど、確かに輝きがありました。
娘たちにも輝いた青春が残りますように☆
高校時代聞いてたのがこちら
と思ったら新譜出してた!!